歌集 「花の木」 岡崎ふゆ子 より
今にして思へば吾も若かりき一途にひとに潔癖にして
幸は手にもたまらず過ぎゆきて苦しみ越えし過去長かりき
思ひ切り家庭を出でて苦しみきわが六人の子をひき連れて
垣根ごし隣の犬を覗見して心をどらすわが一年生
つながれしコッカースパニエル取巻きて有頂天なる子供三人
何にわが心寂しむトランスをのせしセメントの電柱見つつ
母を呼ぶ子供の声と犬の声街の夕べのざわめきの中
私は昭和五年アララギに入会し、最初中村憲吉先生のご指導をうけました。中村先生ご逝去の後は、土屋文明先生に師事し、先生にはいつもいつも叱られていましたので、今でも身にひびく鞭の音を感じます。然し先生なればこそ叱って下さり、それなればこそ今日の私がある(たいしたものではありませんが)という有難さも思い知られるものです。
『花の木』後記より
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作者、岡崎ふゆこについては、三宅奈緒子『アララギ女性歌人十人』に詳しい。 同じく『新アララギ』2001年3月号に『「女性歌人における社会詠(二)」岡崎ふゆ子の場合』がある。
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