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(平成26年12月号) < *印 新仮名遣い> | 
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 | ○ | 三 鷹 | 三宅 奈緒子 | 
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 | リハビリすと手を振り足を屈伸すこの時のまはもの思ふなく 七十年はやく過ぎたりときどきの悲しみ嘆き詠ひあげ来て
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 | ○ | 東 京 | 吉村 睦人 | 
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 | いつ見ても一人こつこつと俯きて鉄板を敲きゐるこの町工場 父の使ひに毎日のごとく活字買ひに神田須田町に来しひとときのあり
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 | ○ | 奈 良 | 小谷 稔 | 
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 | 照りつくる日射しに吾は歩くのみただ歩くのみ「ヒロシマの日」を 驟雨暗く三輪の夏野を襲ふ見え今日六日「黒い雨」のまぼろし
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 | ○ | 東 京 | 雁部 貞夫 | 
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 | 落合先生甲斐の葡萄を語り止まざりき建長禅寺の縁に坐りて マルコポーロ「見聞録」にて西域の葡萄描きしや今は思ひ出だせず
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 | ○ | さいたま | 倉林 美千子 | 
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 | ラインの岸の秋思はするこの日差しベンチ囲みて陽炎のたつ ピアノの和音バーンと鳴らして立ち上る昔ばかりを思ひ出すなと
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 | ○ | 東 京 | 實藤 恒子 | 
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 | 神幸祭の写真「ガブリ」と片仮名のタイトルに姉は少しこだはる 無調法の弟ふたり玄界灘の魚(いを)を食ひ写真談義爛発
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 | ○ | 四日市 | 大井 力 | 
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 | 三ところに恙を持ちてこの年のはじめての鰯雲を仰ぎぬ このままでゆくのか手術を選ぶのか決めて七日後来よと言はれぬ
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 | ○ | 小 山 | 星野 清 | 
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 | なつかしき文字に心を引かれつつ古き手紙は己が手に捨つ ポストまでの往復五百メートルがこの頃のわが戸外の歩み
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