(平成27年12月号) < *印 現代仮名遣い>
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○ |
三 鷹 |
三宅 奈緒子 |
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怒号裡に可決されしと結末をただ伝へらるるのみの我らか
「むき出しの権力の姿」と批判せる今朝の社説をくり返し読む |
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○ |
東 京 |
吉村 睦人 |
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自衛隊を砂漠で訓練させゐるはイスラム国と戦はせる為か
防衛産業の社長が大き鞄提げ総理官邸に入りてゆく夢 |
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○ |
奈 良 |
小谷 稔 |
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百歳にて聞きましし「すぎゆく時のこゑ」この世のこゑか見ぬ世のこゑか
右左耳の大きさ異なると詠みましきすでに聞えぬ耳を |
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○ |
東 京 |
雁部 貞夫 |
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いく度もテレビは映す石下橋節の生家は至近距離なり
かの橋に近き堤防切れしとぞ広き野埋めゆく鬼怒川の水 |
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○ |
さいたま |
倉林 美千子 |
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一人子を亡くされしとぞその文(ふみ)を机に読みまた立ちて読みたり
眼をあげて伸べし両手を握りたり老いて一人子を友は亡くしぬ |
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○ |
東 京 |
實藤 恒子 |
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現政権に我慢ならぬと友はデモに出でゆく頃かあしたは行かむ
原発の汚染水は出づる儘いくさの悲惨を又もや加ふ |
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○ |
四日市 |
大井 力 |
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デモ参加十二万また三万の二紙報道この差まさしく思想の落差
何を信じ自らの思ひ定めむか鉄山和尚在さば問ひたきものを |
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○ |
小 山 |
星野 清 |
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親しみし渋き面構へまた思ふ今朝新聞に訃報の載れり
亡き友と夢に語りぬめづらしき酒を開けむと座を構へつつ |
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