(平成28年1月号) < *印 新仮名遣い >
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○ |
三 鷹 |
三宅 奈緒子 |
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あらたなる年迎ふるにあらたなる思ひの沸きておのれ清めよ
思ひ思へばさまざまの少女らと交はりき惑ひつつ若きらに清められ来し
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○ |
東 京 |
吉村 睦人 |
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コスモスの花に飛び来し大き虻茎傾けて蜜を吸ひをり
油点草の花に来てゐる小さき蝶静かに時の今過ぎてをり |
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○ |
奈 良 |
小谷 稔 |
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老いて体重四キロ減りしに気づきたり踏み出す足の重さつのるに
夜の闇に呟く声は声帯を病みて癒えざるあはれだみごゑ |
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○ |
東 京 |
雁部 貞夫 |
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吉野山逃れし義経いこひたりし「うたたね橋」か吾も一服
弓矢もて戦ひし世は牧歌的いま破滅的「核」の防ぎ矢 |
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○ |
さいたま |
倉林 美千子 |
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谷遠き雄たけびかとも聞きし風竪穴住居を吹き過ぎてゆく
大陸との往来なき世の縄文土器繊細豪華この谷あひに |
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○ |
東 京 |
實藤 恒子 |
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戦争と核兵器のなき世をと訴ふる被爆者谷口氏の映像に拍手す
熱線に焼けただれたる背の皮膚のべつとりと手につきぬと谷口氏証言す |
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○ |
四日市 |
大井 力 |
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運動場に藷を作れといふ指示に鶴嘴を立てき八歳終戦のまへ
身の丈を越ゆる鶴嘴をもて余すを助けくれにし友先に亡し |
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○ |
小 山 |
星野 清 |
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沿線のいづこにて咲くこの宵か空ける車内に木犀かをる
ゆくりなく会ひたる人に聞くものかつひに廃人となりたる友を |
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