斎藤茂吉歌集『あらたま』より
かりそめの病といへど心ほそりさ夜ふけて馬のおとをこそきけ
うつつなるわらべ専念あそぶこゑ巌(いわお)の陰よりのびあがり見つ
ゆふづくと南瓜ばたけに漂へるあかき遊光に礎(さわり)あらずも
はつはつに咲きふふみつつあしびきの暴風(あらし)にゆるる百日紅のはな
朝ゆけば朝森うごき夕くれば夕森うごく見とも悔いめや
斎藤茂吉の第二歌集『あらたま』の歌である。この自在さに瞠目する。まさに個性的な感じ方、個性的な言葉の遣い方、どれも現代にあっても新鮮である。この歌集が刊行されたのは大正10年、今から96年前の事である。
再び斎藤茂吉を読み返している。改めてその歌の個性的な感じ方や大胆な詠いぶりに惹かれている。
内田 弘
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