風ありて茜(あかね)のひかり流れたりそのおほいなる夕雲のあたり
ほろびたるものを惜しまず移りきてしづけきあした麦に降る雨
あめつちのあひだに生くるけはしさをことわりとしていのちをいきむ
雪残る麦生(むぎふ)の空に啼(な)く雲雀(ひばり)ひとつくだりて二つゐる見ゆ
あるときは駒草(こまくさ)の青にちからわきおのづから心ひくくしたりき
鹿児島寿蔵(1898-1982 紙塑人形創始者、人間国宝、アララギ派の歌人)の作品から五首を引いた。このようなおおらかな調べを持つ作品に折々に触れることは、自然を詠む力を養うことにもつながるのではなかろうか。
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