斎藤 茂吉の歌「白き山」より
おほどかに流れの見ゆるのみにして月の照りたる冬最上川
まどかなる月やうやくに傾きて最上川のうへにうごく寒靄雪雲の山を離れてゆくなべに最上川より直に虹立つ
最上川海に入らむと風をいたみうなじほの浪とまじはる音す
人生きてたたかひの後に悲しめる陸に向かひ迫るしき浪
茂吉の一番いい歌は私は「白き山」であると今も思っている。決して古くはない。おおどかに自然を凝視して自然と一体になっている気がする。自然の中に息づく人間の荘厳さが伝わるとも思う。いつまでも参考にしたいものである。
大井 力
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