三宅奈緒子歌集『風知草』より
五月の渚
えごの花咲く林径ひえびえと暗きに海の潮が匂ふ
岩の間に浮ける水母をかこむなど少女らとゐて五月の渚
渚にあそぶ少女らのなか岩陰に一人すばやくビキニとなりつ
彩色せる大きコンテナ船沖を過ぐながく砂にゐて砂あたたかし
身を軽く揺りつつ唱ふ少女たちCome sail awayと一つリズムに
コーラスの終りたるとき指揮の少女白き帽子を聴衆に投ぐ
このサイトでは2月の更新から「短歌雑記帳」に三宅奈緒子の「選歌後記」を掲載している。新潟出身の作者は後に東京に出て長く教師生活を送った。昨年亡くなるまで、新アララギでは多くの会員に慕われる選者でもあった。
この一連は少女たちと共に居るときが詠まれている。生き生きとした少女たちの姿が爽やかに詠まれると同時に、沈潜した作者の静かな世界も詠み込まれている味わい深い連作である。
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