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○ |
甲 府 |
青木 道枝 * |
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沈みてはまた浮かびくるカイツブリ思いもかけぬ水面の方より
湖を吹く風にさざなみ限りなし葦の根浸しこの砂の地へ |
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○ |
札 幌 |
内田 弘 * |
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幾重にも聞える発車のベルの音ホームの屋根の雪しずる音
春の日は平屋の屋根より雪しずり音がマンションの四階に響く |
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○ |
横 浜 |
大窪 和子 |
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見知らぬ小虫つぶてのごとく飛びて来ぬ開くページにしばし見て打つ
一日の悔いにひと時向き合ひていつしか眠るなべて委ねて |
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○ |
能 美 |
小田 利文 |
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「新幹線」と呼びて菜月が乗りたがるステーションワゴン車も下取りに出さむ
月面のクレーターの如き雪道も進むほかなし利用者が待つ |
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○ |
東広島 |
米安 幸子 |
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大き卓にしほしほとのぶる夢ひとつ編集長は了解下さる
塀沿ひに蔓延るたんぽぽ摘みてもよきか自転車おりてためらふ少女 |
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○ |
島 田 |
八木 康子 |
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新東名の工事の余波か山奥の寺のガラスに果てしカワセミ
菩提寺のガラスに果てしカワセミが我らを見つむ剥製となりて |
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○ |
柏 |
今野 英山(アシスタント) |
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二十軒の醤油造りの並び立ち香りの中をさまよひ歩く
大工場家内工場立ち並びそれぞれ贔屓の醤ある街 |
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