| 『扇畑忠雄遺歌集』より 憲吉と茂吉文明三つながらみ葬りに侍りしえにしを思ふ文明の告別式を終へしのち青山墓地に茂吉の墓訪ふ
 隣り合ふ坂にまじはる坂ありて繁り合ふ木に見おぼえのあり
 坂下りてまた坂あればしばしばも行きて迷ひき似たる街並
 霧沈む白夜の国をめぐりしと旅の便り届くわが病む床に
 年々に恋ひまさりゆく影一つ茂吉先生のうしろ姿か
 わが街の豊かになりししるしとぞ浜の光のかがやかに見ゆ(辞世の歌)
 昭和二十一年(三十五歳)歌誌『群山』創刊・編集責任者。平成十七年七月十六日逝去。享年九十四歳五ヶ月。 |