アララギも若かりしかな憲吉は燕岳よりこの会に来し
つひに稲をやめたる兄か雪なくて乏しき春の水を憂へず
足弱り歌衰ふるを多く見き文明先生といへどその中
榧の実の皮青々と高きより散らして山雀の宴たけなは
暑き夏過ぎて思へば山ふかく白き全けき滝二つ見し
小谷稔歌集『黙坐』より。毎週末のように各地の歌会に出向き指導を続けられた先生だが、歌会のあとの雑談のなかで「歌会の指導にしても、アララギから受けた恩に対する、恩返しのつもりでやっている」といった内容のお話をされたことがある。その指導をもう受けられないのは本当に寂しい。 |