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○ |
甲 府 |
青木 道枝 * |
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熱きカップ両のてのひらに包みこみ窓に見ている霜降りし土
道枝という名を付けしわけ初めて聞く母の上着のほつれ縫いつつ |
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○ |
札 幌 |
内田 弘 * |
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メルトダウンの原子炉は汚染水を太平洋に漏らし続けいるや
早く帰れと打つ鐘の音が響き来る美しく雪降る時計台の路地 |
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○ |
横 浜 |
大窪 和子 |
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清めたるロッカールームに「ありがとう」の文字を残ししわがサッカー選手ら アジアカップ
アラビア語日本語英語に感謝のことば書きしボードが世界に伝はる |
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○ |
能 美 |
小田 利文 |
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子はビデオ吾は買ひ置きし本を読む加賀の寒さにいまだ馴染めず
蔑まるるよりは憎まれむ六十年拙く生きて至りし境地 |
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○ |
東広島 |
米安 幸子 |
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祖父夫の後輩となる十二歳「先は長し」とつぶやく夫は
丸く大き月に影して鶴わたる目のあたりにせし人に幸あれ |
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○ |
島 田 |
八木 康子 |
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旧交を温める会にただ一つルールあり孫の話はしない
誘はれるまま加はりし富士登山つひに先頭まで押し上げられき |
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○ |
柏 |
今野 英山(アシスタント) |
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ビルの間にネガのごとくに残りたる表具屋畳屋この下町に
他を抜きて身を起こさむは世のならひ稲荷に並ぶ「たぬき」の社 |
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