草間 よしお 『シベリア抑留兵の歌』 より
本年七月に亡くなられました草間よしお氏の作品集より、数首を紹介いたします。草間氏は九十七歳の高齢でしたが最後までシベリアの歌を詠み続け、最終稿のなかの一首は「手押し車に洗濯物のせ帰りゆく妻が病室の吾に手を振る」でした。
シベリア抑留の短歌
零下四十度の夜も励みき一年を耐ふれば日本に帰る日来ると
シャツ脱ぎてパンと換へにきシベリアの夜に民家の扉たたきて
日本に帰らむとして収容所の土這ひずりき半ば狂ひて
シベリアの三年はおどろおどろにて帰国後年賀をくれし友なし
北満州の曾て兵たりし吾に戦友よと語り給ひし宮地先生
抑留画家 香月康男(山口県)
墨の色に五彩ありと言ひ六十万の虜囚の悲しみを捨象しゑがく
シベリアより持ちて帰りし有刺鉄線アトリエの壁にいまもかかぐる
帰国前に死にし抑留兵が夢に見し「日本海」の絵のスカイブルー悲し |