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○ |
甲 府 |
青木 道枝 * |
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学校は昼の休みか葡萄棚つづきいる丘に声のひびきて
収穫終え清められたる畑土にひと夜の雨のひかり残れり |
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○ |
札 幌 |
内田 弘 * |
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連なりてトンボが茜の空を行きその複眼が水を恋いたり
ベランダの欄干に止まるアキアカネ翅が震えて逸れているのか |
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○ |
横 浜 |
大窪 和子 |
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ブルーシート張る屋根の下また同じコースを来るといふ台風を待つ
国際会議にメルケル女史のふくよかなる微笑みあれば頼みしものを |
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○ |
能 美 |
小田 利文 |
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歳を忘れ妻と枕を投げ合へりラクビージャパンの勝利に酔ひて
「地下神殿」が街を護りき進化形小放水路を造れ何処にも |
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○ |
東広島 |
米安 幸子 |
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雨あとのテントに初めて子と寝ねし娘を気遣ふ雨の被災地を
身を堅く幾日横たふ被災地の人達いかにまた雨が降る |
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○ |
島 田 |
八木 康子 |
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何十年ぶりにか入りし図書室の空気に怯む重く淀みて
「人間死ぬこと以外かすり傷」と誰が言ひしかわが身を去らず |
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○ |
柏 |
今野 英山(アシスタント) |
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パパが来て爺ぢ要らぬと言ひはなつ忖度するなき幼の本音
令和の世に「東京裁判」なまなまし国益の果ての行きつく姿 |
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