日本の名山を紹介するテレビ映像を見ていて、若かりし日に登った鈴鹿や那須の山道が浮かんできた。足腰が衰えた今はなかなか登山の機会もないが、山で詠まれた歌、山に関連して詠まれた歌を読むと、山の空気に触れた時の爽やかな気分が蘇ってくる。
ほととぎすわが目のまへを飛びて鳴くさ霧にくらむ花原(はなはら) のうへ 斎藤 茂吉 川遠白く見下(みおろ)す山に若き僧のこころ鋭くなれば来(き)にけむ 吉田 正俊 雲間より洩れし光は果とほく町あるきはまで照らし出だせり 宮地 伸一 凍る道に杉の枯葉を撒きて登る幼くて父に習ひしごとく 小谷 稔