コロナウイルス感染が一部を除き落ち着き、緊急事態宣言も解除、世の中が次第に活気を取り戻しつつある。梅雨は鬱陶しいと捉える向きもあるが、私は、緑が瑞々しく、紫陽花が咲き、暑すぎず、気持ちがしっとりと落ち着くこの季節が大好きである。そして先人の歌に一層心が潤うようだ。
いくたびか雨にも出でて苺つむ母がおよびは爪紅をせり
長塚 節『長塚 節歌集』より
六月の疾風は潮を吹き上げてはや黄に枯るる蒲なびくかも
土屋 文明『六月風』より
梅雨雲にひとつ雲雀のこゑひびき葦間に鳴ける声と呼応す
宮地 伸一『葛飾』より
きそひたる春の花過ぎしづけさの戻り来し野は梅雨ぐもりして
小谷 稔『再誕』より
|