「新アララギ」11月号には、昨年の12月に亡くなられた吉村睦人先生の追悼特集が組まれている。先生は生涯に六冊の歌集を編まれたが、その中の最後の歌集『蝋梅の花』から数首を引きたい。新アララギの創刊に尽力され、初期のホームページにもコメンテーターとして係わってくださった方である。味わってお読み頂きたい。殊に最後の二首を。
吉村睦人 『蝋梅の花』より
新しき歴史ここにてはじまるか何もまだなき事務所のフロア
出来上がりし創刊号をわが持ちて真つ先に行きぬ子規のみ墓に
「新アララギ」の委託販売に骨折れる幾人かありてわれも励めり
透き通るまでに色あせし蝋梅の花にてなほもかすかに匂ふ
暗みゆく庭のひとところほのぼのといまだ明るき蝋梅の花
雪の下にひしがれてゐし黄かたばみは蕾つく茎より立ち直りゆく
千年余作りつづけ来し歌にしてその先端にわれらの歌あり
歌一首出來しよろこびは万葉時代も二十一世紀も変わらずと思ふ |