新アララギ2013年1月号「一月集 T」より
草にすがる虫の草色いつまでかそのはかなさに夕べの光
吹く風に光散らして揺れてゐる芒の穂波沈む太陽
乳牛も肉牛もゐる丘の上雪来る前の草のやさしさ
少しづつ黄葉ふえゆく栃の木の茂り茂りに風騒ぐ音
実にまぎれ咲くハマナスの花ふたつ余韻としつつ心にしまふ
半端なる甘さ広がるビスケット噛みくだきゐて何の寂しさ
笹原登喜雄
笹原登喜雄氏は新アララギ編集委員として、また「北海道ア
ララギ」編集長として尽力された歌人。この歌が掲載された年
の3月18日に72歳という年齢で急逝された。昨年12月に
亡くなられた吉村睦人先生からの信頼も厚く、
札幌に君居るといふそれのみに心強く思ひゐたりしものを(新アララギ2013年8月号)
委員会に出席することは出来ざれど必ず率直なる意見を送りくれたり(同9月号)
といった追悼歌にも、笹原氏への思いが込められている。
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