近年、世を隔てられた「新アララギ」の選者の冬の歌より。
をどるごと咲きて黄金に輝ける万作の花にわれは近づく
吉村睦人 『夕暮れの運河』
寒の水をわれに浴びせし父のごと厳しき冬をひそかに待てり
小谷 稔 『樫の木 第五集』
海を見ず幾年過ぎしか足なへのわが憧るる冬の海波
佐々木忠郎 『続風紋』
白ワインに一人の年を送るなり亡き人の写真にカップ掲げて
三宅奈緒子 『風知草』
雪降れば心は和ぐと言ひたりきそれより長く心寄せ来ぬ
新津澄子 『疎林の風』
北極星まうへに近く輝きて永久(とは)なるものを嘆かざらめや
宮地伸一 『町かげの沼』
時折に霧氷崩るる音しつつ患者なき実験なきこの山のなか
添田博彬 『企救小詠』
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