添田博彬
終の日に傍に居れぬを負ひ目とするビルの診療を今日も疑ふ
クリニック閉ぢむと決めて心揺らぐ恩頼に報い得たりしや否や
インターンの最初に学びし胸郭穿刺を老いて受くるは思ひみざりき
人眠る頃に読まむとする心起きるは生きゐる証とも思ふ
君を思ふ静かなる夕べ雨の中に白き花垂れ雫してをり
添田博彬先生は「新アララギ」選者、「リゲル」発行編集人として短歌の指導に尽くされた歌人である。掲載歌五首は、今年の「新アララギ」二月号の「アララギの人々」欄に寄せられた、篠原信子氏による「添田博彬−歌に生きる−」に掲載された作品から選んだ。五首目は敬愛する歌人金石淳彦を詠んだ歌として紹介されている。 |