吉村睦人の歌
・日刊新聞「婦人タイムス」に失敗し多額の借金抱へゐしわが生まれし頃の父母
・父の使ひに毎日のごとく活字買ひに神田須田町に来しひとときのあり
・お飯事の大好きなりし幼なりしが今日はシチューをあたためよそふ
・草むらに拾ひ来たりし花梨いくつ虫のつきしがもつとも匂ふ
・海老根蘭に花芽のはやも出でてをり斑雪の残る広き葉のかげ
・ベランダの小さき鉢に何草か萌え出づる春になりにけるかも
新アララギの代表でもあられた吉村睦人先生には「 吹雪く尾根」「動向」「夕暮の運河」「鉄鉛集」「蝋梅の花 」と、計五冊の歌集があります。
2019年(令和元年)12月4日ご逝去、享年八十九でした。
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