ロシアのウクライナ侵攻をはじめ、さまざまな紛争や事件が続いて、私達の心も暗く沈みがちなこの頃ですが、今月は、2月号で金野久子さんが紹介された「春の雪」に続く三宅奈緒子先生の清新な初夏の歌「五月の渚」をお届けします。
遠足や修養会など、翌春には退職を迎える先生の心に残る少女達との風景が、みずみずしく詩情豊かに描かれて、清らかな世界がひろがります。
( 清野八枝 )
「五月の渚」
(「風知草」より)
えごの花咲く林径ひえびえと暗きに海の潮が匂ふ
岩の間に浮ける水母をかこむなど少女らとゐて五月の渚
渚にあそぶ少女らのなか岩陰に一人すばやくビキニとなりつ
彩色せる大きコンテナ船沖を過ぐながく砂にゐて砂あたたかし
身を軽く揺りつつ唱ふ少女たちCome sail away と一つリズムに
コーラスの終りたるとき指揮の少女白き帽子を聴衆に投ぐ
テーマ分かちグループ討議する若きらよ寮の森には小綬鶏鳴きて
炎かこむ少女らの輪に月照りて影はしづけし芝草のうへ
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