小谷稔先生の歌 歌集『牛の子』 新現代歌人叢書・36より
新アララギの選者であり、長くこのHPのアドバイザーも務めてくださった小谷先生は、いまだに本誌のみならず胸に迫るような偲ぶ歌が見受けられるほどに、私たちに強い影響力を及ぼしている精神的な拠り所だと思っています。
・時々の人の心を読む努力過ぎて思へば気弱より来つ
歌集「秋篠」
・父が炭を焼きたる谷はミツマタの花のあふれてこの世ともなし
歌集「ふるさと」
・田一枚占めて立て干す茶筅竹いつまでも夕べの峡に明るし
歌集「朝浄め」
・アザミ枯れて白くかかぐる実の絮も今日の西日に透きとほりたり
歌集「大和恋」
・水の上に拾ひし花を水にもどし心しばらく澄みゆくごとし
歌集「大和恋」
・後ろより追はるる何の思ひかも谷の藤を見る今のうつつも
歌集「大和恋」
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