小谷稔先生の冬(雪)の歌
雪の上に雪は降りゐて軒下の籠の熟柿に鵯の来る 歌集『朝浄め』より
風呂焚きし薪を雪の上に消す音なつかしく臥所に聞きぬ
離乳して小屋分かちたる牛の子の雪積む夜半にしづかになりぬ
雪に暮れし一日思へば育苗機買へと勧めて人の来しのみ
山深く棺の車迎へむと弟は融雪剤を撒きに出で行く 歌集『大和恋』「母逝く」より
重箱の餅負いて寺に行く習ひ今も守りて雪踏みて来ぬ
亡き母がをとめの頃に裁縫を習ひし寺か雪深く積む
歌集『牛の子』の牛の子の歌 牛の子の乳吸ふ音の聞ゆるも寂しかりけりふるさとに寝て 牛の子を伴ひて母の嫁ぎ来しその山道も荒れて家絶ゆ |