坪野 哲久(つぼの てっきゅう)<1906-1988>
1925年「アララギ」に入会し島木赤彦に師事
あたらしき世界国家のあくがれを説くともあらず子と地球儀回す 『北の人』
春潮のあらぶるきけば丘こゆる蝶のつばさもまだつよからず 『一樹』
木琴の音響かせて春分の路地キラキラし木の芽のひかり
『春服』
われの一世に窃なく盗
なくありしこと憤怒のごとしこの悔恨は
『碧巌』
絶壁にひとり立つ二十代の感覚のいまだも消えず白髪しごく
『胡蝶夢』
烏瓜
壁につるせばここが秋しゅらしゅらしゅらとひとりあそばな 『人間旦暮』
歌という小形式をさいなみて死ぬべきわれかそれもよかろう 『同』
|