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今月の秀作と選評



吉村 睦人 (新アララギ編集委員・選者)


秀作



大窪 和子

ひとりゐる日暮れに俄かに木立騒ぎ窓より雨の匂ひ入りきぬ



え め

何事もないかのように仕事する突然二人抜けた会社で

佳作



倉田 未歩

研究に音楽活動に明け暮れる君をもう少し起こさずにいよう



下野 雅史

北風に靡く笹の葉動物の毛並みの如く生き生きとして




澤 智雄

前向きな科学の進歩は純粋に調和ある響きに聞こゆ




長澤 英治

べにきいろ金糸銀糸にくるまれて娘らの語り合ふそれぞれの恋




え め

疑ってもいいよそうして口結び疑うことを拒んでるより





「短評」
秀作
大窪作 実感としてなまなましく感じられます。
えめ作 現在の社会の一つの空気がよく捉えられています。

佳作
倉田作 「起床時間」の方もよいが、こちらの方がさらにいいでしょう。
下野作 「生き生きとして」が言葉だけでなくいきいきと感じられます。
澤作 「不調和なき」と二つの否定があるので、結局「調和」でしょう。
科学のある面を言い得ているようです。
長澤作 他の四首は、表現の方に傾いていて実感に乏しい。
しかし、この歌は上の句の比喩にも実情が捉えられています。
えめ作 「心より」「こと」の方が、心も包含しているからよいでしょう。
異性でしようが、その人に対する思いが感じられます。



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