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今月の秀作と選評



吉村 睦人 (新アララギ編集委員・選者)


秀作



え め

特急が小さきホームを過ぎ去れば雪はふたたび静かに降れり



井上 秀夫

凍てし朝受験に向かう銀輪は長良の堤を一列に行く



のんの

何とかなる何とかなると思いつつ過ぎこし日々を今日こそ変えん

佳作



明日香

めくるたび切れそうになる古本を切れないように願いつつよむ



長澤 英治

獲しものを主人に誇る猫のごとチョコの包みを下ぐる家路に

「いつもお世話に」のメッセージ付けしままチョコの包みがいまだ書棚に




井上 秀夫

遥かなる眼下にうねる長良川しろく光りて霞に消える

白銀に輝く伊吹峰ま向かいに見すえて受験のペダルを踏みぬ




のんの

遠き地に君住みおりて毎朝の今日もがんばれメールの届く




西川 英士

窓ガラス向こうに映る一輪のトルコキキョウはわれに関せず





「短評」
秀作
えめ作 特急が雪を舞い上げて作者の居る小駅を通過したのであろう。
様子がよく出ている。
井上作 他の歌と共に受験に向かう心意気が感じとれる。
「銀輪」は着実に「自転車」の方がよいと思う。
のんの作 惰性で生きている己に対する決意に共感できる。

佳作
明日香作 原作の方が改作より良いと思う。
長澤作 ニ首目だけにしようかとも思った。
チョコレートを貰ったときの心理がよく出ている。
井上作 叙景歌として過不足なく表されている。
「白銀に」の方を「秀作」にしてもよかった。
のんの作 「毎朝の」は「朝毎に」とし「今日もがんばれの」と括弧に入れ「の」を加えてはどうか。
西川作 「向こうに映る」は「向こうにある」ということだろうか。
「われ関せず」のところに作者の一つの思いが語られていよう。

選外の作はよく研究を重ね、推敲を重ねてほしいと思います。
尚、別途説明しますが、石井登喜夫氏は当分の間「お休み」をされます。 
ご了承下さい。



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