秀作 |
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○ |
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森 良子 |
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吾が先に席立ち行けば教室にスイスドイツ語の会話が始まる |
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評) 親しくてもやはり異邦人の孤独、新しい生活感覚の作。 |
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佳作 |
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○ |
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大窪 和子 |
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ためらひて言葉少なくいふさまに汝を育てし人のおもかげ |
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評) 饒舌の世相に染まらないつつましい矜持を秘めている人間性を見た深みのある作。 |
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○ |
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長澤 英治 |
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その時の待たるるほどの約束など希有となりたる日々を生きをり |
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評) 若い日は過ぎて、約束がないことは人間関係の展開もないこと。 思索派の視点がおもしろい作。 |
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○ |
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上北 隆史 |
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他人(ひと)の物盗らば腕(かひな)を切ると子を躾し父なり老い給ひたり |
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評) わが国にもこのように父権性の存在した時代があったのだ。 |
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○ |
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久住 誠鶴 |
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いらだちてガラス戸蹴破るおもいなど我が子は重き障害をもつ |
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評) おもいなど」と例示的説明をせずに「音たてて」と直感的にしたい。 |
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○ |
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井上 秀夫 |
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豊饒なる九尺ふじの花房を乳房のごとく手に受けてみる |
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評) 頭が重いので「豊かなる」でよかろう。「乳房」で藤の量感となまめかしさが表された。 |
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○ |
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しおみ |
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寝静まる世界にひとり目覚めいて痛み忘れて星を見て居つ |
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評) 下句、「柄を逆立てし北斗見て居つ」のように写生すると深夜も暁に近づくまで見ていた感じがでる。 |
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