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○
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宮野友和 |
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我が眼疑ふほどの美少女が一駅乗りて降りてゆきたり |
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窓外の夕暮れに少し安堵しつつ「経済好調」の中吊を見し |
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評)
通勤の途中であろう。二首共に作者の個性が生き生きとして人柄がよくでている。「木場公園」歌もよかった。 |
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○
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としえ * |
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灯の帯となりて電車がよぎりゆく過ぎたる人を思いいるとき |
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揺れる枝水面に触れて映りいるしだれ柳の芽吹き初めたり |
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評)
女性らしい感覚がいきている。一首目は上の句の比喩が珍しく。成功、平凡な下の句を支えた。二首目もしっかりと見ている。 |
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○
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近藤 かすみ |
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事件後は鶏肉鶏卵控へしがうやむやとなりて食卓に乗す |
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川の面(おも)覆ふはなびらおのづから流れの速さに従ひてゆく |
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評)
作者自身の生活に即した実感であろう。現代社会の一面を写している。二首目は花びらの流れて行く遅早に気付いて確か。 |
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○
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長閑 * |
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子のために臨む最後の卒業式ざわめきの中はじまるを待つ |
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鞄の中に位置の定まる営業道具夫と共に今日は休日 |
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評)
母親のときめきと感傷が静かに表現されていてよくなった。二首目は視点がユニークで、ご苦労様という夫へのねぎらいが一杯! |
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○
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西田 義雄 * |
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バス通り避けてたどりし裏道に忘られし帽子と燃えるれんぎょう |
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ピザ運ぶ胸板厚き青年の耳たぶに光る緑のリング |
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評)
「ライト浴び」でもよかったが、「ピザ」との二首となると、あまりにもギタギタするので、「バス通り」にしました。「忘れられたる帽子とれんぎょう」でいいでしょう。二首目は現代の若者風俗。作者は何か入言いたいのですね?
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佳作 |
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○ |
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新緑 * |
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タオル敷いてOK立てたよ右半身多少の不自由に人手は借りず |
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評)
上の句の口語が、明るく前向きの姿勢を効果的に表現。決して軽くはないペーソスを感じさせる。 |
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○ |
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けいこ |
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病院の待合室に待ちし吾チェロの夕べは別人となる |
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評)
うってかわって華やいだ気分に作者自身が驚いている。それを覚めた目で客観出来たところがよい。 |
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○ |
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石川 一成 * |
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久々にわが畑くれば自生せし雑木は茂る幹の太りて |
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評)
「わが畑に」重なってもここは「に」を入れたい。捨てて何年にもなる畑なのだろう。「わが畑」だからこそ山に返る様子が切実である。
「ブリキ屋」の作も良い。同じモチーフが感じられる。 |
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○ |
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つね姫 * |
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満開の桜木はしっかり根を張りてアスファルト舗道を押し上げており |
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評)
骨格のしっかりした一首。こういう歌が出来るようになると、ご主人への相聞歌も深くなるよ。 |
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○ |
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ようこ |
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壁あれど球体ならばやがて越えむプラトンが説われら信じて |
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評)
「球体ならば」は「球体であったならば」、「球体なれば」なら「球体であるからして」。後者でないと意味がしっかりしない。未然形+ば、と、已然形+ば の違いに注意。「鉢の植物」の歌もいいが、今回は個性的な一首を。 |
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