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○
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長閑 |
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古代史の天皇の名を諳んずる母と巡りぬ垂仁御陵を |
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評)
母の姿とともに、母に対する作者の感じ方までもがほの見え、確かな表現によって心を湛えた歌となっている。一連の他の歌も、なかなかの作。 |
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○
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大志 |
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国境の小さき橋の橋ぐひを激しくたたきライン流るる |
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評)
「小さき橋の橋ぐひを激しくたたき」は捉えどころで、情景をうまく切り取って表現し得た。「満ち足りて臥す耳になほけふ訪ひしシャフハウゼンの滝音残る」もよい歌だが、結句は「滝の音聞こゆ」とでもしたい。 |
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○
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とも |
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ひたすらに君に相応しくなりたいと学ぶを君は「向学心」と呼ぶ |
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評)
ひたむきな心を感じさせる一連の中で、この歌が最も端的に作者の心が表されていて味わいがあろう。 |
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○
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廣 |
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痛む肩を四十肩とて見栄を張る再出発の五十五歳に |
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評)
その心意気を賞で、再出発を祝福したい。 |
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○
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新緑 |
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階段を杖にて上がりまた下る介助の人の眼を感じつつ |
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評)
一読して、作者の姿や心持を感じ取ることができる。 |
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○ |
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としえ |
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いつもいつも遠くを見ている目となりて汝にも恋する人の出来しか |
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評)
初稿の観念的な上の句をここまで改作することのできた「開眼」を祝して、あえて秀作に加えよう。 |
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佳作 |
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○ |
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宮野 友和 |
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夜の雨がフロントガラスを叩くとき桑田佳祐の歌が聞こえてた |
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ボート部員の筋肉の張りを見るうちに寂しくなりぬOBのわれは |
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評)
一連、自分の言いたいことを飾らずに表現しようとしているところがよい。中から2首を抽いた。 |
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○ |
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石川一成 |
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健診の業務につきし子は母に減量せまれり賞金つけて |
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減量を始めし妻の支えにとジムのマシンに我も励めり |
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評) 一連の素直な捉え方や表現に好感を抱いた。中から2首を抽いた。 |
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○ |
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けいこ |
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痛みありし長き静養の日は過ぎて日差しは冬より初夏に変われり |
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評)
療養のための時の長さを捉え、快方に向ってきたことも感じさせている。 |
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○ |
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西田義雄 |
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空気澱むビルの階段を駆け行けば腰の万歩計カタカタと鳴る |
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評)
日常の業務に関わってのことだろうか。1、2句にある感じがある。
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