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○
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山本 道子 |
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見慣れたる子規の横顔が朝刊の紙面にありて糸瓜忌と知る |
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亡き夫とともに散骨ねがふ友よ吾は夫と土に還らむ |
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評)
写真を横顔としたところが写生の急所です。
友のことでなく自分を詠んで面目一新。 |
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○
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宮野 友和 |
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幾条も鉄道線路並び居て果つる辺りは草に雨の降る |
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満員の通勤電車に乗るときのコツなど俺は覚えたくなかった |
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評)
正統的叙景歌も今日の若者の社会への違和の嘆きもともに詠む力を付けた。正統的といっても現代のしらしらとした新しい叙景。 |
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○
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米安 幸子 |
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旅ゆきて春おそき国の朝々の卓にやさしき会話と紅茶 |
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アールグレイにミルク注ぎて懐かしむ運河の街の深き朝靄 |
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評)
欧州の旅の雰囲気が出た。観光的でなく生活的なのでよかった。下はその旅の回想。 |
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○
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新緑 |
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ケイタイにコンバインの音高し友の返事は途切れつつ聞こゆ |
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評)
ケイタイの歌として独自な新鮮さ。稲刈りの労働中の現実感がよい。新緑さんの身体障害の歌はいつもよいが今月のような新しい素材にもひろげてほしい。 |
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○
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石川 一成 |
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感動の心出でこず昨日までひたすら数字あやつりし身に |
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評)
数字を扱って心が散文的になって歌がわいてこない、という発想がおもしろい。 |
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○
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大志 |
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新生児に飽かぬうからの輪を離れ書斎に開くけふのパソコン |
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評)
新生児は少子化の今日、ことにめでたい。ともに女親とは違って男親の特色がでているのはそれだけ実感に忠実だからであろう。 |
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○
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雨宮 始 |
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君の名と君の微笑む落書きがノートに増えて図書館を出づ |
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評)
壁の消火器の歌のころは、正直「新狂歌」なのでこまったが、急速によくなって驚いている。こういう若者の素顔が見たかった。 |
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○
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かすみ |
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厨ごと習はぬままに母逝きてわれは娘に何を伝へむ |
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評)
おふくろの味を伝えられない母の嘆き、生活の原点のひとつを捉えた。 |
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佳作 |
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