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○
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中村 |
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逝きし母のおもかげ立てば在りし日に伝へそこねしこと思ひ出づ |
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評)
推敲前の上句は母の齢の人を見てというので複雑すぎた。これで母に対する集中度が純一になった。 |
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○
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知己 |
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山深き谷より引ける清き水ひねもす流る蓮公園に |
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評)
水を主役にして蓮公園のさわやかさが溢れている。叙景歌がよい。 |
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○
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英山 |
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むき出しの溶岩重なり赤々と火口へ続く登れ登れと |
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評)
荒涼とした火山に登山を挑む男性的な情熱の迫力がよい。 |
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○
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石川 一成 |
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年長く籠れる甥は饒舌に吾子と語れり幼のごとく |
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評)
ひきこもりの甥が同年輩の従兄弟によって脱却できそうな安堵感。 |
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○
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大橋 悦子 |
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見舞う毎持ち行く花を描きたる画に囲まれて眠る父なり |
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評)
この画には父子のあたたかい心の交流が凝縮している。画をポイントにしたのがよい。 |
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○
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小林 久美子 |
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吾が部屋の掛けし「ゲルニカ」戦ひに倒れし人ら無彩色なり |
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評)
絵の表面的解説でなく自分独自の感じで捉えた。 |
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○
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大志 |
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女性さへも太平洋戦争を是としゐてわが反戦の弁は届かず |
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評)
八月、戦争に関する歌として傍観でなくみずから行動して捉えた強み。 |
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佳作 |
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○
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新緑 |
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己が声をテープに聞きて安堵しぬ麻痺に耐えつつ司会を務め |
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評)
よくがんばっている。障害ということを出さない詠み方も試みてください。 |
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○
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斎藤 茂 |
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足でこぐふいごの風に火花飛ぶ鉄打つ祖父をふと懐かしむ |
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評)
今日の日本では失われて久しい手仕事のなつかしさ。 |
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○
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ともこ |
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歪みたる己が背骨を庇ひつつデンドロビュームに支柱を添へる |
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評)
花の平凡な世話が作者の境涯によって特殊なものになる。病気もマイナスのみではない。 |
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○
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けいこ |
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十日間の時を隔てて会ふ孫ははじけるやうに吾に飛びつく |
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評)
孫歌の甘さに陥らず健康なみずみずしさ。 |
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○
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紫縁 |
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川べりを歩けば小魚寄りて来てひとり寂しき我を慰む |
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評)
しかし孤独は抒情の宝庫です。 |
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○
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西井 |
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老い先の短きゆゑに年毎に同窓会するとふ齢になりぬ |
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評)
原作の事務的報告から「齢になりぬ」という嘆きとなった。 |
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