佳作 |
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○
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新 緑 |
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大雨に我が家の鶏舎気遣ひて友は朝早くメールを呉れぬ
我が部屋に忍び込みたるキリギリス薔薇の造花に止まりて鳴きぬ |
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評)
いま普及しているメールがものめずらしい素材としてでなく、現実の切実な生活のなかで詠まれている。
二首目、薔薇の造花にとまりて、という偶然を捉えた写生の新鮮さ。 |
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○
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小林 久美子 |
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向こう山のバイパス反対を叫べども渋滞ひどく気勢あがらず |
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評)
自然破壊には反対するが車の渋滞対策のバイパスはほしい、という矛盾を簡潔に捉えている。 |
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○
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石川 一成 * |
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潮騒を聞きし幼日思いつつ夜明けの渚を一人歩めり |
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評)
海水浴の一連のなかで泳ぎを詠んだものは小さい傷が点々とあったので結局均整のとれたこの作が残った。最終稿だけの提出なので「小さい傷」が推敲されないのであろう。 |
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○
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イルカ * |
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水の中解放感に身をゆだね泳げる我は幼な子のごと |
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評)
これは最初のままで推敲不要であった。「解放」は日常の何かの束縛からの解放なのでこれでよく「開放」はよくない。 |
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○
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けいこ |
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あかつきのしじまを破る熊蝉の甲高き声すぐにやみたり |
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評)
対象を良く絞りこんで集中しているのがよい。 |
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○
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市村 恵 |
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一本の老いし柿の木裂けし幹のあらはに曇る大地に立てり |
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評)
柿の老木の一連、老木を生ける人格のように捉えて力を入れた作であったが、もうすこし肩に力をいれずにまた観念的に自然を見ないで、新鮮な写生を導入してほしいとおもう。 |
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