佳作 |
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○
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栄 藤 |
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六十年経てなほ昨夜の夢に来て敵機が機銃掃射浴びせぬ
徴用の暗き記憶の中になほ一際重き被爆の体験 |
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評) 類例が多いと言われようとも、両首のような声を上げることは大切だろう。
2首目、上の句に工夫の余地がある。例えば3句を「数々に」とすれば「中になほ」が省けるなど。
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草屋根は瓦に替はり知る人も少なくなりし古里の村
遺されし父の花壇の片隅に今朝朝顔の白ばかり咲く |
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評)
3首目、苦労した甲斐があった3、4句。
4首目のような情感を大事にしたい。 |
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○
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吉岡 健児 |
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食ひ違ふ意見にむきになることもなくなりて呑むビールは甘い
悔恨を肴に呷るコップ酒赤提灯に蜉蝣群るる
倦まずなほ落とされし歌あらためて時雨るるなかをポストに向ふ
秋日さす野辺に薄の穂のひかり歩き遍路の鈴の音響く |
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評)
一連、手際よく歌われている。「手慣れた歌」とはほめ言葉とばかり言えない。歌らしさの殻を破り、いかにして己らしさを発揮するかが、力のある作者の課題ではあるまいか。 |
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○
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石 川 |
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来る年の古希の記念に富士山へ共に登らんと子らの言いきぬ
妻病めば気の晴れぬらし隣家の主にいつも酒の匂えり
いかほどの助けになるか隣家の主の愚痴をしばし聞きおり |
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評)
日常のある一こまをすくい取って、表現も無理がない。 |
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○
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斎藤 茂 |
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くちびるに紅をささむか死顔の安らかなるはわれにありがたし
線香のけむり絶やさず母の辺に有りし書き置きをまたひらき読む
母をおくるみ寺の庭の片隅に沙羅の木の花咲きてをりたり |
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評)
1首目の下の句、最終稿では「…をわれはありがたし」再三指摘のあったこの助詞が元に戻ってしまったのは残念。平凡なようだが、3首目が一番完成度が高い。 |
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○
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英 山 |
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若きらは笑みつつ地酒を勧め来ぬフェスタに紛れし日本人われに
這ひ松の枝重なるを抜け出でて振り返り見る山なみ青し |
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評)
原作の「勧め来る」では以下につながる感じが残るので、このように文語でいったん終止するとずっとよくなる。
2首目は、早くからほぼまとまっていた。 |
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○
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けいこ |
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をさなごと手をつなぐのはあと幾年か朝陽を背なに影法師並ぶ |
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評)
心持ちの籠った歌になっている。 |
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○
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イルカ |
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仰ぎ見るいちょう並木の黄金色あまねく空を覆いつくせり |
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評)
歌はこのように、素直に写し取ることによりよい歌となる。
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