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○
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雅 |
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家にゐて家に帰るといふ母のまなこくもりてわれを映さじ |
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評)
母の現在を捉えて、冷静に歌っている所を評価したい。直接的な言葉ではないが、、難しい題材を具体的に詠んで認知症を何とか表現をしようとしている意欲を感じる。 |
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○
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斉藤 茂 |
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枕べにアルバム五冊重ねつつ今宵は亡き母の布団に眠らむ |
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評)
淡々と悲しみを抑えつつ、歌つたところが優れている。追悼の歌は数多く見るが、やはり、感情を具体的な動作に収斂させていくのが読む者の心を打つ。下句が良い。 |
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○
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吉岡 健児 |
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笑み浮かべ葡萄摘みゆくをさなごのくれなゐの頬に秋の日の射す |
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評)
幼子の様子が生き生きと描写されているところが印象的である。その意味で、新鮮な歌である。「葡萄を摘」んでいる動作と秋の日が頬に射している、取り合わせが効果的であるともいえる。 |
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○
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新 緑 |
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車椅子を四人の友に抱えられ高野の山の石段上がる |
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評)
淡々と歌っているが、良く引き締まった表現である。「車椅子」を使う作者、その車椅子を四人の友が抱えて、高野山を一段ずつ登っていく動作を歌うことで、友に対する作者の思いも読むものにも伝わって来て良い歌だ。 |
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○
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大橋 悦子 |
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二十年ひとりの冬を過ごし来し父を温き上衣に包む |
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評)
父に対する思いが下の句で具体的に表現されて、胸を打つ。しかも、その父は「二十年ひとりの冬を過して来た」のである。余計な感情を表す言葉を用いずに一首を纏めたのが良い。 |
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○
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英 山 |
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五合目より白くなりたる富士冴えて朝早き町を人の駆けゆく |
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評)
富士山を歌って一般的にならなかったのは、状況をしっかり捉え、焦点を合わせて歌ったからである。早朝の町を人が駆ける、という動きのある表現が生きている。 |
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○
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石川 一成 |
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山辺の三輪の桧原に雲きれて鳥居のかなた二上山見ゆ |
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評)
着実な写生の歌で、表現が良く引き締まっている。確実に見て、しっかり表現している。 |
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○
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小泉 誠 |
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歩行器に頼りてもなほ歩めぬと衰へし父を兄は語りぬ |
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評)
結句は物足りないものを感じるが、上の句の具体は生きている。肉親の歌は切実なるが故に、露な感情が出すぎるきらいがあるが、今月の歌は抑えた表現でしみじみとした歌が多かった。この歌もそうである。 |
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