| 佳作 | 
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○ | 
 | 鳴滝 |  
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 | 星屑を仰ぎ我立つこの星も星より見れば星のひとつか 星仰ぎ仰ぎ疲れてうつむけば上下うしなふ恐怖がよぎる
 
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 | 評) 宇宙のことをよむには余程考えがしっかりしていないと、空疎になる。この歌は一見概念的にもみえるが、その星に住む自らに思いを寄せて詠まれていることに注目。二首目の歌は、眩暈のなかにある、小さい不安、そんな従来にない叙情に挑戦している作にこころ惹かれた。
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○ | 
 | イルカ |  
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 | 崩れたる雪の灯篭立ち並ぶ祭り終わりし上杉神社に 藩校と謳われし母校の跡地には新しき碑の片隅に建つ
 
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 | 評) ふるさとを訪ねた際の嘱目であろうか。序情味豊かに歌われていていい。「雪の灯篭」は雪を積み上げてぼんぼりのようにしたのであろう。雪国のふるさとが偲ばれる。二首目も母校跡地の変わりようを簡潔にのべていい。
 
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○ | 
 | けいこ |  
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 | 十日前は見ざりし白き木蓮の咲き揃ひたり帰途の旅路に 風いまだ冷たき馴染みの魚屋に春初めての鰹求め来
 
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 | 評) 一首目旅ごころの終るころ、木蓮の純白の花が目に飛び込んできたのであろう。旅ごころの余韻で純白に輝く花だ歌えた。二首目は生活のなかの区切りのようなものを女性の感覚で捉えられている。
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○ | 
 | 大橋 悦子 |  
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 | 別れ来しばかりの君に送らむと駅にて花の絵葉書を買う |  
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 | 評) 語り尽くせない思いが溢れている。若々しい歌だ。
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○ | 
 | 斎藤 茂 |  
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 | 脳動脈瘤の疑ひなしの診断に立ちゐて椅子に座りなほしぬ |  
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 | 評) 安堵感が読者にも伝わる。思わず椅子にというところであろう。いい歌だ。
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○ | 
 | 新緑 |  
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 | カーナビの「案内終了」を聞きてより目指す施設を杖突き探す |  
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 | 評) 目指す施設は近い、けれども杖を突いて探さねばならぬのであろう。もどかしい思いがよく伝わる。事実を述べているだけに見えるが、深い息使いが聞こえる。
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○ | 
 | 英山 |  
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 | 雑念を抱きて歩む尾根道にスーパー林道また出あひたり |  
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 | 評) また出あうということは、曲がりくねった林道にまた横切る状態で合うのか、沿ってゆくのかは分からない。しかし尾根道に深呼吸させてゆく作者をみる思いだ。
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○ | 
 | 若葉 |  
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 | 新雪にひざまで埋まる登山道けものの足跡遠く続けり |  
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 | 評) この歌も感じのいい歌だ。作者に先立って「けもの」が通ったのであろう。雪に空気まで澄み渡っている感じをよく出している。
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○ | 
 | 吉岡 健児 |  
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 | 福寿草咲いたとをさなき子を呼べばつむりを合はす声をひそめて |  
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 | 評) つむりを「あわせに来る」のであろう。ここがもう一息の感があるが、優しい思いがあふれていて気持ちのいい歌だ。
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