佳作 |
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○
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イルカ |
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強き風の寒さに揺れる庭桜色濃きつぼみの今咲かんとす
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評)
「今咲かんとす」という下の句が良い。蕾が膨らみ、まさに今咲こうとしている瞬間も見逃さない、詠いぶりが良い。上の句はもう少し、緊密な表現が欲しかった。 |
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○
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けいこ |
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しずまりて白々咲ける満開の桜もうとし孫去りたれば |
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評)
結句を「去りたれば」と直して採った。お孫さんが、帰ってしまった後の「桜も疎い」と感じるほどの虚脱感がよく出ている。原作の「去りたらば」では、もし去ったならばという仮定の意味になり、歌が弱くなる。改稿の時の質問を読み返すと、私も明確に答えていなかった。初句の「白々咲ける」あたりは、もう少し工夫が出来るところである。 |
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○
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斉藤 茂 |
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歓迎に園児の歌ふ「数字の歌」共にかぞえてわれも歌ひぬ
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評)
場面が生き生きと歌われていて、読むものにもほほえましい雰囲気が伝わってくる。手際よく纏められた歌である。 |
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○
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吉岡 健児 |
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常臥しの子規仰ぎたるガラス窓の傍らに立ち曇りを拭ふ |
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評)
子規の歌を自分にオーバーラップさせて、引き付けて歌ったところが巧みである。 |
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○
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新 緑 |
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「そよ風がおいしいね」と東京に住みいる友は二十歳に戻れり |
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評)
ちょつとした友の言った言葉を敏感に感じ取り、一首に纏めたところが、良い。 |
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○
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大橋 悦子 |
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点滴を受けしか父は血のあとの残りし床に深く眠りぬ
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評)
父上の看病する作者の細やかな心が伝わってくる歌だ。「深く眠りぬ」が良く利いている。
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○
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十夜間 アン |
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太陽の眩しさについ振りかえる自分の影を確認したくて
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評)
素直に自分の気持が出た歌である。自分の影を確認する事で、自己存在をも確認すると言う独自性が出た歌である。倒置になっているが、「振りかえる」と結句に据えて纏めるほうが落ち着く。 |
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