佳作 |
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○
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けいこ |
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保育所に向かふ朝々をさなごと声を揃へて歌うたひゆく
アトピーにむづかるをさな夜ごとに起きでてママよババよとすがる
馴染みなき都会の総合病院に五時間待ちて五分の受診
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評)
1首目、過去の結句を現在にした。それぞれ内容は、やや一般的と言えよう。 |
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○
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大橋 悦子 |
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誰が生けてくれしか父の病室に黄の水仙の花のまばゆし
臥す父の手にクレヨンの生き生きと桜の枝を写しゆきたり |
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評)
それぞれある水準に達している。 |
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○
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英 山 |
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大方が梅割たのむこの店にOLまでもが連れだち並ぶ
創業は明治十年といふ四代目注文にこたふる声歯切れよし
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評)
大衆酒場の寸景は捉え得た。2首目、3句の「の」を省き、歌も少し歯切れよくした。 |
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○
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イルカ |
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一斉に隙なく草の萌えいでぬたんぽぽの黄を包み込みつつ
学生の頃にさらいし六段の調べの流る恩師の庭に |
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評)
一応は言い得ている。2首目、原作の「調べ流るる」では歌が宙ぶらりんなので、いったん終止させた。 |
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○
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吉岡 健児 |
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「この漫画が欲しい」と告げるをさなごにためらひつつも千円を出す
名作のならぶ書棚の片隅に売れ残りたる歌集見つけぬ |
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評)
作者と幼な児との間柄がいまひとつ見えないところが弱かった。両首、一応は言い得ている。 |
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○
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若 葉 |
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肌の色語る言葉は違えども願いは同じかトレビの泉へ
教会の壁に残れるダヴィンチの『最後の晩餐』ただ立ち尽くす
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評)
それぞれ、やや不消化でもったいない。2首目、「ただ立ち尽くす」だけではもの足りない。 |
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○
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斎藤 茂 |
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ひとり居のわれを気遣ひ訪ね来ぬ娘(こ)は食材の袋を提げて
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評)
一応は言い得ているが、今ではありふれている内容である。 |
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○
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新 緑 |
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リハビリに歩く速さは年々に衰えるともめげずに歩く
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評)
言いたいことは、このようなことなのだろう。原作とは違いすぎるので、ここに置いた。 |
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