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○
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ひ で |
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至仏山の草の剥がれし道下りまた返り見ぬ我が踏み跡を
唐松は絶えることなく葉を落とす黄金の色に我を包みて
やがて冬心おきなく眠れよと静かに雪よ尾瀬に降り積め |
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評)
初句字余りでも「の」を補った。
2首目、強い執着のある唐松とのこと、結句に少し手を入れたがこれでいかがか。
3首目、作者の思い入れを受け止めることができる。この一連には共感を覚えた。 |
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○
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小林 久美子
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過疎進み檀家も減りぬと声落とす老いたる僧の姿忘れ得ず
この寺に今日の記帳は四名のみ褪せたる冊子に吾も名を書く
夏の夜を泊まりに来よと坊守は寺の外まで見送り呉れぬ |
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評)
1首目、3句にたどりついた努力を買おう。下の句、少し手を入れた。
以下、それぞれ捉え得たものがある。「坊守」の語が利いている。 |
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○
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むぎぶどう *
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出発を楽しみに待つ子の文字が修学旅行のしおりにあふる
子の班の立てた予定は分刻みマクドナルドを出る時刻すら
夕暮れの舗道あかるしかたわらにセイタカアワダチソウ咲きいでて |
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評)
1首目、さまざまな試みがあったが、こんなところでまあ落ち着いた。
2首目、当初から完成の域、「マクドナルド」が効果を上げている。如何にも少年期の姿が見て取れる。
最後、ある雰囲気を湛えている。評者はこの草を忌む一人だが、それは別の話。 |
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○
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斎藤 茂 |
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熊笹の群がり茂る川の辺に彼岸花咲くひと処あり
徒競走の白組優太は声かくるわれに手を振りビリ走りゆく |
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評)
地味だが味わいがある。
2首目、子供の屈託のなさがうまく捉えられている。 |
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○
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栄 藤 |
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身の内の灰汁のすべてが出たやうな散歩のあとの汗を拭へり
看護師に齢を聞かれて八十と答へつつわが歳におどろく |
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評)
1首目の散歩の後のさわやかさ、2首目はその驚きに共感できる。若さある歌の詠めることを称えたい。 |
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○
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英 山 |
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稜線の砂礫に這へるミネヤナギ吹き上ぐる風に絮(わた)を飛ばせり
汗落つるままにやうやく出でし尾根吹きくる風に山百合香る |
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評)
その情景が見えるようだ。2首目、4句は理屈っぽく言わずに、この位軽く行きたい。 |
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○
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けいこ |
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動き止まぬをさなの遊び相手われ馬になつたり汽車になつたり
亡き母と夫に守られうかうかと子育てせしを今に思ふも |
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評)
その様を、軽く楽しく捉え得た。
2首目、上の句の自覚があるのだから「悔いて」はなくても思いは伝わる。「守られうかうかと」が眼目。 |
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○
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吉岡 健児 |
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閉山に廃校となりしわが母校の窓辺に薄まぶしく揺るる
万年筆のインクの匂ひ嗅ぎながら無事に過ぎたる一日を綴る |
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評)
原作の結句では薄に集中し過ぎるので、別案を提示した。
2首目、少しおとなしいが、昨今の暮らしの中の万年筆とインクの価値を認めよう。 |
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○
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坂本 ひすい * |
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様々な思いはあれど今はもう去り行く人を敢えて留めず
海鳥は風にあらがい飛んでゆく白き翼に夕日をあびて |
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評)
ある感情を、落ち着いて捉えているところがよい。
2首目、上の句にうまく照応する下の句となった。 |
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○
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新 緑 |
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階段の段差の高く麻痺の足脅えながらにそろそろ下りる |
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評)
作者の状況が思われて、読者と共に見守りたい思いだ。 |
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