佳作 |
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○
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吉岡 健児
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群鳥を曳きつつ還る一艘の漁船の艫に落日の射す |
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評)
「落日の」は「夕光の」としたい。レベルの高い作品群だが活きいきとした所に乏しいように見える。鮮度をどうやってだすかが課題だ。 |
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○
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山本 景天 |
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マンションの窓を揺さぶる木枯らしの中を洩れくる「きよしこの夜」
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評)
歳末が迫って来るなかで、日常の「わびしさ」が描かれている。 |
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○
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斉藤 茂
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焼けこげる秋刀魚食べつつ盃(はい)重ね一人の夕餉佗しけれども
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評)
「こげし」「重ぬ」としたい。この作も一人暮らしの男の「わびしさ」の歌だ。佐藤春夫の詩とよく似ているのがややマイナスか。 |
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○
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仲 山 *
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この歳で戴くことの恥ずかしさ胸のブローチ面映ゆさ |
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評)
ある年齢に達した女性の気持が微妙に写しだされている。 |
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○
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小林 久美子
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秋桜の咲ける茶房に共に来しきみ去り店は錠を下ろしぬ
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評)
「店も」としたい。かつての恋が閉ざした店の前を通ると思い出されるのであろう。メランコリックなところが良い。 |
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○
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ひで
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白髪の翁と酒を酌み交す薪はぜりて燃える山小屋
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評)
「はじけて」「燃える囲炉裏に」としたい。内容があるに実際の表現ではずい分手こずった一連であった。地道な努力で表現をみがいてゆこう。 |
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○
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飛 朝
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窓のないドイツ料理店の支配人フォークナプキン無言で並べ
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評)
何となく「ドイツ」的な感じが出ている一首。但し「・・・で並べ」と結んだのは「川柳止め」と呼ばれる俳句的表現で、軽く、落ち着かないので、言い切ること。 |
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