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○
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英 山 |
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終電にうちの会社をなめるなと男の声あり吾が酔ひ醒めぬ
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評)
会社の営業マンがその日の欝憤酒で晴らしたのであろう。会社員の作者には他人事ではないのだ。結句のすぐれた効果である。 |
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○
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小林 久美子
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亡き母のその髪切りて作りくれし針山常にかたはらにあり
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評)
手縫いに使う針山はせっせと家族のものを縫い、繕ったかつての世の母のシンボルのようなもの。深い慕情をこめている。 |
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○
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新 緑
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禁煙を勧めし女性は子のためにきっぱり止めたと笑顔に話す
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評)
忠告をしても無駄なことが多いがこれは成功した。子のためにというのは作者の忠告のポイントであったのであろう。 |
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○
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斎藤 茂
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夜の更けて布団の中で「山姥」を読みやるわれは疲れて眠し
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評)
甘くなりがちな孫歌を甘くなく詠んでいる。結句の正直さでよくなった。 |
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○
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吉岡 健児
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夜の時雨つめたく光る窓の辺に椿の莟仄白く照る
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評)
神経を集中した繊細な感覚の作。 |
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○
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吉井 秀雄
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若き日に共にリングに立ちたりき君思ひ出せあの打たれ強さを
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