|
|
○
|
|
吉井 秀雄 |
|
赤々と松明燃える境内に達磨売りらの呼び声響く
|
|
|
評)
縁日の祭り行事に合わせての出店、そして売り声、生き生きとその場の雰囲気を描き出した。表現も引き締まっている。「ら」としたが、「達磨売り」の声だけで良い。 |
|
|
|
○
|
|
けいこ
|
|
花冷えの霞める空にやまざくら行くての山を白く点せり
|
|
|
評)
推敲を重ねて、纏まりのある作品となった。印象鮮明な場面を歌にするとき、とかく思い入れが勝ちすぎる傾向があるが、良く抑えた表現となった。そこを評価したい。 |
|
|
|
○
|
|
斎藤 茂
|
|
三人にて五人のをさな乗るリヤカー土手に押し上ぐ桜の満ちて
|
|
|
評)
面白い場面を歌にした。そこが新鮮である。大人3人がかりで、幼子の乗ったリヤカーを押し上げて桜を見せているのかもしれない、厳密には場面は特定できないが、ほのぼのとしたものが伝わる。 |
|
|
|
○
|
|
新 緑
|
|
間伐材で沸かしし温泉を友と浴ぶ麻痺の左足を気遣われつつ
|
|
|
評)
下の句に実感がこもっている。淡々と歌ったところが良い。 |
|
|
|
○
|
|
は る
|
|
夜の街を走る電車の乗客の皆ひたすらに携帯を打つ
メール打つ夜の電車の乗客の長き爪先巧みに早し
|
|
|
評)
現代の風俗を捉えようとして、努力した。一首目は都会独特の情景が客観的に表現できた。二首目はその一人に着目し、細かい所まで歌った。その意欲を買いたい。 |
|
|
|
○
|
|
吉岡 健児
|
|
黄のゑのぐ使ひ尽くしてをさなごは菜の花畑駆け廻りをり
|
|
|
評)
巧みな歌だ。「黄」の絵の具と菜の花畑、とが多少作意が目立たないわけではないが、全体が生き生きと歌われているので、それも許されるであろう。 |
|
|
|
○
|
|
さつき
|
|
竹の子はまだかと竹林踏み入ればウグイスの声笹間より聞こゆ
|
|
|
評)
少し幼い表現でもあるが、春のうきうきした雰囲気が捉えられていて、魅力的である。「竹の子」を探して、踏み入った竹林に「ウグイスの声」がする、という所が良い。 |
|
|