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○
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まりも |
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大根を刻む夫の背広からず独り残してゆけぬと思ふ
夫や子に支へられ来し三十五年過ぎて楽しきことのみ浮かぶ
ブランコを漕ぎつつ孫の呼ぶ声は遠き日のわが幼な子のこゑ |
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評)
1首目、深刻な状況を窺わせて見過ごせなかった。
2首目は、独立性にやや欠けるきらいはあるが、このままで受け入れられる。
幼かったわが子と孫の声の重なる3首目の歌、この1首でも思いは汲めるが、他の歌と合わせて読めば一層の味わいを覚える。 |
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○
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は る
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一人ずつ呼ばれる名前と子の「はい」を入学式に耳澄ませ待つ
川の辺にあまた並べる鯉のぼり風を待ち居りカメラも吾も |
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評)
1首目。丁寧に表現されていて、母親の緊張感を目の当たりにするようだ。
2首目は最近各地で見られる鯉のぼりの歌だが、下の句に工夫が見られる。 |
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○
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英 山
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尾白川渡らむとすれば雪被る甲斐駒ヶ岳大きく迫る
唐松のあはひに見ゆるオベリスクの雪寄せぬ切っ先黒く鋭し |
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評)
両首、その情景をなかなか巧みに写し取っている。 |
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○
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新 緑
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辛抱も限度と卵の自販機に五十円アップのシールを張りぬ
麻痺のわれ助手席に乗り妻と行く鶏卵価格の値上げ会議に |
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評)
この類の歌は、このように直接的に言うのがよい。「五十円アップ」、本来は「…値上げ」と言うべきだろうが。 |
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○
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けいこ
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浴室の明かりを消して湯浴みせり古きプレイヤーにチェロ聴きしあと
頼まれし朝の散歩に老犬の寄り道待ちて鶯を聴く |
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評)
1首目、アナログでチェロを聴き、その余韻を保ったまま…、共感できる。結句を「あと」で終らずに「聴き終へて」などとしたいが、それには他もいじらねばなるまい。
2首目、頼まれごとを果たした者への功徳か。しかし、初稿がこう生まれ変わったことには驚かされた。 |
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○
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山本 景天
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はつ夏の風吹く矢切の渡し舟櫓を軋ませて岸離れゆく
ラムネ玉の音なつかしみ舟を待つ矢切の渡しの駄菓子屋の前 |
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評)
初稿からの変遷を顧みてそれぞれの歌にそそいだ、その努力を買う。
2首目の歌、道具立てが面白い。 |
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○
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斎藤 茂
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君の名の同級会案内届きたりその夜に君の死の知らせとは
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評)
人生には思いがけないことがある、その驚き。この歌のように核心部分を掴み取れるとよい。 |
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