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○
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まりも |
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味噌駄菓子並べてひさぎゐし店の閉ぢてふるさとに人影のなし
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評)
この月に一連は父母の墓参のものであるが、その折のふるさとの変貌ぶりがよく表現されている。なにか物悲しい景が読むものにも響く。説得力のある歌。 |
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○
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山本 景天
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嫁ぎゆく娘の買ひ物に付き合へり誂へし揃ひのジーンズ穿きて
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評)
娘を嫁がせる寂しさが底流にあって喜びと同時に襲うのであろう。複雑な思いが一首に結晶している。 |
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○
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金子 武次郎 *
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常日頃自らを野人と言いし父思うが儘に生きし一世(ひとよ)か
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評)
父を回想して、作者の齢もまた近づくのであろうか。野人といってはばからなかった父、顧みてみる思いは懐かしく、もの悲しい。 |
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○
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けいこ
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いづこから来し芥子菜かいま黄なる花群となり梅の木覆ふ
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評)
どこから来たか不明の芥子菜がいつか種を落として年々増える。そのしたたかさにこころを動かす作者。技巧をこらさない作でいい歌。 |
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○
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新 緑 *
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玄関に倒れしという麻痺の友に倒れて見せて立つ術教う
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評)
下の句により、状況がいきいきと伝わる。いい歌だ。麻痺の身を嘆くことなく、淡々と事実をのべたことが強い。 |
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○
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太 田
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自家野菜の露店出す老人は声太くいふ「兵隊の年金など下ろしちまつたよ」
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評)
会話の内容を投げ出したような作だが、作者とのやりとりが目に浮かぶ。事実の強さだけで歌が構成されているがこれも無技巧のよさであろう。 |
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○
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吉井 秀雄
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日の暮れにテント張り終へ仰ぎをり赤岳の隣り星の瞬く
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評)
単独行にて山に挑む作者のこころ揺らぎが底流にあるのか。下の句は情緒豊かである。感性のいい歌である。 |
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○
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勝村 幸生
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三十年住みて初めて気づきたり玄関に仰ぐ薄白き月
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評)
いまになって気付く白い月、おそらく冬の月であろう。淡いこころ動きであるが、叙情性ゆたかに把握されているのがいい。 |
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○
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松 本
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湯中りの妻の脈拍確かめて手首を探る探れど触れず
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評)
下の句は抜き差しならない緊迫感がでている。こういう緊張感を歌にするのは手馴れてないと難しい。しかしよく纏まった。 |
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○
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市 村
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風よ風わが頬を打てこの山の今この時に在す証に
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評)
内観性に高い詠み口である。「在す」はどう理解させたいのか。天の神よその存在を示す風をもって吾が頬をうてというのか私はそう理解した。 |
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