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○
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吉井 秀雄
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電話鳴り母死に給ふ知らせかと駆け寄りてその発信地見る
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評)
何度か改作の結果よい歌になった。昔の受話器なら発信地は分からないが、今のケイタイなら、分かるのだろう。そこが今の時代をあらわしている「班鳩(いかる)」の歌も、なかなか良かった。 |
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○
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大 田
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年ふりて二人にて行く旅のゆめ厨に立ちて妻の語りぬ
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評)
この初句はもっと別な表現があると思うが、このままにしておいた。内容は十分共感できる。つつましい生活の歌である。 |
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○
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金子 武次郎
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宣戦のニュース流れる寒き朝人ら黙して焚き火囲みき(太平洋戦争)
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評)
「流れる」は「流れし」とすべきところだ。下の句の場面、臨場感がよく出ている。 |
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○
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うてな
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約束の時間過ぎゆき氷片に香り失ふアークグレイは
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評)
この作も定稿に落ちつくまでに難行したが、上、下句が響き合ってよい作になった。最後のひとねばりが利いたのだ。「夜祭り」の歌もよい。がっちりした歌で、甲乙つけがたい。 |
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○
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福田 正弘 *
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わが母は死に給いたり病室に日本百名山のビデオ残して |
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評)
日本百名山のビデオを亡き母が病室に残していた、と詠んで立派な挽歌となった。残された者も、時にそのビデオを見るだろうと読者は思う。そこに歌の広がり(歌は作者だけのものではない)が生まれるのだ。他の作品もしっかりしている。 |
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○
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勝村 幸生 *
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靴底の左右の減りの大きな差ジョギングシューズにゴム張り終えて |
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評)
靴底の減り方が左右で異なると表現した所に実感がある。日々ジョギングに励む作者の姿も彷彿とする。「グリーグの」の作もよい。 |
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