佳作 |
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○
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石川 順一
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汗の雨滴らせつつ草抜けば我の気力の増し来る如し
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評)
健康な労働の汗。労働と気力とが調和したこんな時間はそう多くはない。 |
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○
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まりも
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仕事増す兆しの無きを寂しめど年末に夫と第九を唄ふか
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評)
自営の仕事は順調ではなさそうであるがそれでも第九を夫婦で歌う意志が尊い。 |
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○
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紅 葉
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予備校のくらしや慣れしつぎつぎと出さるる皿を平らげる子よ |
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評)
この予備校の子は。食欲旺盛な男の子であろう。「くらしや慣れし」正しい文語表現ながら古風なので「暮らしに慣れしか」でよい。 |
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○
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桜 子
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霧雨の朝の光に煌めきて涼しき道を犬と散歩す
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評)
雨がなぜきらめくのか不安があったが霧雨によって首尾よく解決しました。 |
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○
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おれんじビール
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蝉を背に付けて歩める老人に「取りましょうか」と声を掛けたり
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評)
この蝉は偶然背に止まったのであろう。動きの活発でない老人によく似合っている。 |
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○
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三橋 友香
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心配はかけないように言葉選ぶ九十二歳の祖父への手紙
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評)
九十二歳の高齢でも言葉にこまやかな感受性があるとは立派です。 |
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