佳作 |
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○
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石川 順一 *
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思い出は薔薇色の化石ある時は漆黒の化石と思う時あり
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評)
面白い捉え方の歌。具体的ではないが、時にはこのような詠い方もありうる。「薔薇色」「漆黒」と色で喩え、思い出を化石と捉えたところは、独特といえよう。 |
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○
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まりも
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放射能汚染を恐れて日本を去りゆく人らも被害者なりぬ
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評)
これも、今回の原発の事故の真実である。さまざまな社会現象を露呈して、いまや日本はただならぬ現実にさらされている。事実を踏まえ冷静に詠っているこの歌もまた説得力がある。 |
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○
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熊谷 仁美 *
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初めての育児楽しと夫は言い寝不足つらしとわれは答える
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評)
何でもないことをさらりと詠って好感が持てる歌。これも真実である。誰にでも経験のある懐かしい場面でもある。素直な表現が良い。 |
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○
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金子 武次郎 *
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やから五人大き津波にさらわれて行方知れずに十日経ちたり
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評)
事実をそのまま詠んで重い歌。淡々と詠んでいるが哀切な歌である。今月の作者の一連はたちどころに詠ったのであろうが、完成度は高い。 |
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○
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安 藤 *
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折りたたみ傘のひとつは祖母用にと母に頼んで贈ってもらう
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評)
この歌は母の日の贈りものに母の母、つまり作者にとって祖母への贈りものも含めて贈った、という微妙な心を手際良く纏めた歌である。 |
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○
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紅 葉
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結婚の記念日けふを忘れずにいたよ君にメールを送る
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評)
柔かい詠い方で好感が持てる。さりげなくメールで結婚記年日の事を伝える、と言う所が良い。 |
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○
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Heath H
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最期とは知らず離れし明け方に眠りてしまいし己を責むる
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評)
この歌もなかなか微妙な心を詠っている。「己を責むる」までは言わなくても良いが、あっても余り気にならないのは、事実が重いからでもある。 |
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