佳作 |
|
|
○
|
|
くりす
|
|
離婚ゆゑ名字も住まひも変へられし吾子よ許せよ母の弱さを
「ママの子でよかつた」といふ吾子からの母の日のカードに胸を熱くす
やけどして泣き叫ぶ子を抱き抱へ外科に走りきエプロンのまま
保育所に預けし帰りに泣きすがる吾子の手決して我を離さず |
|
|
評)
多年の思いが、存在感のある一連となった。1首目、「吾が子よ許せ」として、秀作ができたと思ったのだが…。(柔い感じの「あこ」の音を嫌う、茂吉、文明の流れに育った筆者は好めない。「よ」「よ」のくり返しもたるんでいる。) |
|
|
|
○
|
|
紅 葉 *
|
|
自分から電話をかける気になれずただ待った子の試験の結果
街路樹が辛夷の木とは知らざりし淡き香りの白き花咲く
カーテンに薄日の射して明ける朝きみの寝息にしばしまどろむ
さっきまでともに過ごしたこの部屋にきみの残した一口ようかん |
|
|
評)
推敲の努力もあって、それぞれがある感じを捉えた歌となった。1首目の結句、つまった感じがあったので手を入れた。今後は、一層焦点化して歌うことに努められるとよい。 |
|
|
|
○
|
|
熊谷 仁美 *
|
|
冷蔵庫の中身とチラシをチェックして献立三品ぴたりと決まる
津波からひと月過ぎなお孫を探すじいじのニュースを子を抱き見る
ありふれた実は幸福な日々だったと震災前を語る青年 |
|
|
評)
手際よく歌われているが、秀作と比べれば、こちらは他の人でもおよそ歌える。そこが違う。 |
|
|
|
○
|
|
まりも
|
|
久々にゴルフに出かけし夫の留守手持ち無沙汰は思ひもよらず
夫と吾こころを曝すこともなく三十五年目日々静かなり |
|
|
評)
それぞれに思いをうまく表している。秀作の方には、より味がある。 |
|
|
|
○
|
|
Heather Heath H *
|
|
生ぬるき小雨降る中食細る母の忌むカラス鳴きやまぬなり
大震災語ることすら躊躇わる遠くにて募金のみせし我が |
|
|
評)
初稿に比べて、こちらもずいぶんと磨かれた。 |
|
|
|
○
|
|
吉井 秀雄
|
|
吾を起こす妻の声少し硬くして母の死にたることを悟りぬ
子や孫ら柩の蓋を持ちて泣く眼を閉ぢてその声を聞く |
|
|
評)
一応歌えているが秀作に比べれば、思いのこもり方が足りない。 |
|
|
|
○
|
|
なの *
|
|
デジカメのレンズを通しわが眼木々の間の緑に躍る
|
|
|
評)
着眼がよい。 |
|
|
|
○
|
|
安 藤 *
|
|
鶯の声で目覚める日曜日口真似しつつ窓から覗く
|
|
|
評)
軽いが、気分はよくわかる。 |
|
|