佳作 |
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○
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時雨紫 *
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さまざまの思いの中に書き終えぬ君への返歌を同窓会誌に |
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評)
「思いがけず風の便りに知りし君の最期の御歌に心えぐられつ」に続く歌。歳月を経ての熱い心を歌に託す。 |
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○
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ハワイアロハ *
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十二月の光ひとすじ射し入りてポインセチアは赤く燃え立つ
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評)
ひとすじの光が、花の色をさらに鮮やかに変える。一瞬の変化をとらえて簡潔に表現し、印象的な歌になった。 |
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○
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くるまえび *
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手術終わり麻酔きれしかモニターのリズミカルなる音のみ聞こゆ |
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評)
手術を受けられ覚醒する過程に、まず聞こえてきた音。「モンキーポッド」の樹に架かる虹の歌も心に残っている。 |
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○
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石川 順一 *
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ミニトマトは夏秋冬と実り続く葉の枯れ茎の茶色となりても |
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評)
上の句では大きくとらえ、下の句では粘るように丁寧な描写を重ねた。実直な詠みぶりで他の二首もよいと思った。 |
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○
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波 浪
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子を持たぬゆゑに呼び名に困るらし妻はわれを「うちとこ」と言ふ
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評)
上の句は説明調であるが必要なところであろう。下の句になり砕けた温かい情感へと導かれ、何か微笑ましい。 |
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○
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松 本
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垣越しに乱れて咲けるは小菊のみ花のなくなりしわが散歩道
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評)
取り立てて見る物も無くなってしまったいつもの道。「乱れて咲ける小菊」一つを捉えて、こころを揺する歌となった。 |
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○
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もみじ *
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誕生日まぢかに届きし保険証「後期高齢者」と烙印のごと
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評)
日常に訪れた変化。こういう呼び方を初めて身に受けた時、ぎくりとするであろう。その感じを「烙印」と表現した。 |
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○
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秋島 直哉 *
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列島は打たれ削られ火を被り忍ぶわれらの自画像かとも
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評)
災害が、思わぬ形で次々に襲った昨今。「打たれ・・・被り」と畳み掛ける口調が、下の句の不安感を強める。 |
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○
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鈴木 政明 *
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紅のもみじ葉通し太陽を覗き見しても眩しからざり
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評)
このように柔らかく素直に表現されると、小さな発見からもみずみずしい心の動きが感じられ、魅力となる。 |
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○
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小島 夢子 *
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この思い今すぐ走れ三千里コンピューターに返事をたまえよ
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評)
パソコンに向かって今か今かと返事を待つ作者。手紙や電話とは異なる感覚なのであろう。歌の口調が軽やか。 |
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○
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栄 藤
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事故死せし君に貰ひし無花果の残る一つがいまわが膳に
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評)
突然の友の死。その連作の中にあって最も引かれた歌である。抑えた表現が、深い余韻を生んだように思う。 |
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