佳作 |
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○
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金子 武次郎 *
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少しずつ話し通じぬ老となり頼りの妻をいらだたせけり
届かぬは耳のみならず頭にも老の背筋に寒気走りぬ
聞くも言うも話半分となりし吾電話のベルにびくりとする |
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評)
ありのままの描写は、私たちのほんの少し先の姿かと粛然と受け止めました。力まず飾らず肩ひじ張らない作歌姿勢で、今後も多様な作品を期待します。 |
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○
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かすみ *
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自転車で坂を登ればわが前をこぐ人の背に木漏れ日の降る
白鷺の見返り美人の曲線と五月の空を水田は映す |
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評)
日常のちょっとした光景に惹かれ、見逃さず諦めることなく推敲に励んでものにするこの熱さと、歌らしくしようとしないこと、自然さが何より大事と思います。 |
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○
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時雨紫 *
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労わりの神棲むという杉山に胸のつかえを下ろしてきたし
真っすぐに空に伸びたる杉に吹く風を浴びつつ心和ぎゆく |
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評)
誰にも平等にいろいろなことがあるのが人生だと、歌の向こうに見えるようです。「老いてはここに君と住みたし」の歌にも、いつか日の目を見せてやってください。 |
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○
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仲本宏子 *
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「ただいま」と言うなり孫は公園へ「行ってきます」 の声も弾みて
爽やかな起床も今は薄曇り空一面に黄砂流れて |
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評)
暮らしの中にも歌の種はあるという証明ですね。丁寧に生きることの大切さを思います。 |
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○
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ハナキリン *
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街角にリズムを刻む少年らヒップホップが風に流れて
若人が自転車に行く大通り背負うリュックに花束揺れて |
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評)
生命力にあふれ、大きな動きのある歌になりました。共に下の句が魅力的です、 私もそこに居合わせたかったと思いました。高齢化社会の対局ですね。 |
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○
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来 宮 *
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ポケットの中まで砂の入り込む鳥取砂丘の逆巻く風に
一歩ずつ仁王の如く踏ん張れどわが足跡は右へ左へ |
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評)
推敲を重ねて記念の作品になりました。家を出てから帰るまで、見るもの、聞くもの、感じたこと、何でもメモを取るように歌にしてみるのも勉強になります。
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○
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原 英洋 *
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五月雨に霞む紫陽花をふと思うエリック・サティのジムノペティを聴きて
六月の暑気が入り来ぬ目覚ましを止めてしばしの微睡みの部屋に |
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評)
初稿のまま。名曲に寄りかかっていると言えるかもしれませんが、どうしても留め置きたい心の揺らぎもあるものです。後の歌は「しばらく微睡む部屋に」と。 |
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○
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鈴木 英一 *
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木漏れ日をキラキラ映せし渓流を描いてみたし印象派のごとく
久々に寒さ残れる里山へ「あっ ニリンソウ 小さきスミレも」 |
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評)
清冽な水辺や人里から少し離れた山の空気に、ほっと生気を取り戻すひとときですね。歌はアンテナが何をキャッチするかが始発点だと思っています。「映せし」は「映しし」です。 |
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○
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夢 子 *
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科学者は居ないというが神様に甘えてみたい春の夕暮れ |
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評)
なかなかここまで胸の内をさらけ出すことには勇気がいるものですが、ネットならでしょうか。うらやましい気もします。 |
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